レイモンド・メリマン 週間コメント3/12【金融アストロロジー】○3/17の新月―みんなに降り注ぐエネルギー(フツウの戦士サンたちへ♪)

March 16, 2018

カイロン異説

        カイロン(キロン)と名付けられたケンタウルス族の小惑星は、今はわりと当たり前に使われるようになりました。そしてカイロンが持つ影響力についても「傷付いたヒーラー」「哲学、形而上学、代替医療的な知識を伝える者」または「霊的な教師」「過去(生)からの魂の傷との直面と癒し」など、すでに様々なテーマが提示されてきました。今回は特に霊的な道をを探求しているひとに向けたカイロンの「もうひとつの読み方」に触れてみます。

それは「バルド」「中有」あるいは「ブラックアウト」と呼ばれるエネルギーです。これはドイツ生まれで仏教者でもあったアストロロジャー、故ハンス・ハインリヒ・テーガーが提唱したカイロンのテーマで、彼自身の実体験とリサーチャーによる膨大なフィールドワークが裏付けになっています。ちなみに彼は、ラインホルト・エバーティン、ハインリヒ・クリスチャン・マイヤーパームからアストロロジーを学びユング系の心理学を修めたひとで、ヨーロッパでは著名人の出生データのリサーチで有名なロイス・ロッデン女史と並ぶ、データ・アーカイブの編纂者でもあったそうです。

彼の解説を簡単にまとめると、ネイタルでカイロンと他の惑星や感受点との主要アスペクトを持っているか、またはトランシットやプログレッション、ダイレクションでカイロンとネイタルの惑星が主要アスペクトを形成するとき、一種の人格的または霊的「ブラックアウト」が起きやすくなるということです。チベット密教系に詳しいひとなら、「チベット死者の書」「バルド・トェドゥル」を知っていると思います。死から49日まで、あるいは再生までの中間的な次元に入る…そんなイメージです。

うーん、これって「生きながら死んだような状態」と形容すればいいのかな。けど、カイロンの場合はただ比喩的・象徴的な表現というより、人格や意識そのものが「自分」から乖離してしまうような、なんとも不可思議な体験になります。自分のパーソナリティを支える全てのルーツを失ってしまう…そんな感覚。 これって「離人症」とか「解離性障害」と呼ばれる症状にそっくり。というか、体験している本人がそれを障害と感じるかどうか、周囲がどう理解するかによっても道が分かれる…そういうことなのかとも思います。

例えば生きながら死ぬ…といっても、一応日常生活は出来ます(症状の度合いにもよるけれど)。ただ、日常の所作や会話はどこか脳内キャッシュを使っているような感じかもしれません。 そして、ふと気付くと、周囲のひとも、会話も、目に映る事物も、全てが意味を失ってしまいます。自分の名前も言えるし、ひとや物の名前もちゃんとわかっています。だから別空間に入っていなければ仕事も勉強も出来ます。でも、同時に全ての関係性が本来の意味を失い、自分さえも誰だったか(わかっているのに)わからない状態になります。 そしてまわりを見渡して、ひたすら首をかしげる…全てが、まるで初めて見るような感覚。そこにいる自分自身を含めて。「これは何だろう?」...それがひとつの入り口です。


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  けどそんな感じのときは、大抵はそこで怖くなって「日常意識」に戻ったりします。けれどカイロンのエネルギーが強烈になってくると、いわゆるクンダリーニ現象が起きて身体に様々な不具合が起きたりもします。また、強力な至福の瞬間を味わったかと思うと、ひどい鬱状態に襲われる場合もあるようです。 その途上で、今の自分に大きな影響を与えている過去生をはっきり思い出すような夢や幻視を体験するひともいるでしょう。いわゆるサイケデリックな体験を、ドラッグ無しで通過するひともいます。それはプロセスとして起きてくることの一種で、そのひとのテーマにより体験は様々だし、アスペクトによって強弱も様々です。そのひとがもし何か宗教を信じていれば、その教えに沿った光や神の姿を見ることになるかもしれません。そしてもちろん、霊的な道の探求者であったとしても、必ずしもこうした体験を通るとは限りません。それぞれに自ら設定した旅路を行くからです。

(ただし十分に長い間世の中を生きて、人生経験から培った「人格的仮面」または「鎧」をしっかりと身につけているひとの場合なら、そこまでは行かないかもしれません。それでも、その時点まで自分の「核」として信じていた哲学や世界観がほとんど意味を持たなくなり、存在の中心が空洞になったような感覚を覚える...ということはあると思います。)

ただひとつ言えるのは、カイロンが霊性に触れてくるような働き方をするときは、ことばで説明出来ない種類の強烈な体験をする可能性がある…ということかな。そしてどんなものを見ようと、どんな体験をしようと、それもまたトランジッションであり、自分が通るよう設定してきたプロセスの一環であるということ。それらは皆「道標」に過ぎないということ。まだまだその先があるということ。速度の遅いカイロンが行きつ戻りつしながらネイタルの惑星や感受点に触れるたびに、必要に応じて異なる体験を味わいながら、うっそりと変容していくわたし達。だからもし怖いものを見たなら闘い、そして闘った自分と共にその体験を鎮魂し、葬る。また美しいものを見せてもらえたなら、にっこり笑ってこころから「ありがとう!」と。全てに対して。 そして葬る。再び出来る限り全てを透明に戻し、それぞれの道を、往く。


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  冷静なまま自分という感覚を失いそうになること。「虚」そのものになっていくこと。それはわたし達にとって恐怖です。そのゲートを通ったら、二度とこの日常に戻れないんじゃないか?とも思えるから。でも、起こるべくして起こることは、もし自分の前に拓かれた道を探求する覚悟があるなら、勇気を持って受け入れていかなくてはならないかもしれません。

ひとつ言えるのは、それで全てを失うわけではない、ということ。愛? それも存在します。ただその器と位置と捉え方が根底から変わってしまうかもしれない。もしかしたら、それと意識しないうちに。でも…愛は変わらずそこに在り続け、失うことはありません。もしかしたら、それまで「愛」だと思っていたものとは全く違っていたとしても。たとえ人間としての涙が流れ、人間としての怒りが燃えることがあったとしても。「それ」はそこに、在り続けます。

けれど乖離の道を行くひとが、生きる上でもし支障をきたすまでになったら、専門家に助力を乞うべきときもあるでしょう。ちなみにハンス・ハインリヒ・テーガーが経験したカイロン・トランシットはかなり凄まじかったようです。彼は熱心な密教修行者でした。だからそのプロセスも強烈だった可能性はあります。けれど彼の場合は周囲の人々に何が起きているかを説明し、理解と助力を得られたことが非常に大きかったと記してありました。以前OOBについて話したときも「理解者」の存在がとても大切だと言ったけど、こうしたプロセスを過ぎ越していくときも、どこかに「わかってくれるひと」、または理解は出来なくても「ありのままに受け入れてくれるひと」がいることが、大きな助けになると思います。別にそのひとが何をしてくれるわけじゃなくても。もちろん、こうしたプロセスをたったひとりで過ぎ越していくひともいるし、その場合はそのこと自体が当事者にとって大きな意味を持つのですが。

  いずれにしても、これは一筋縄ではいかない道です。乖離の次の段階では沢山のあやかしに出会うかもしれません。また、ちょっとした神秘体験に固執すれば、そこで道は終わります。けれど、ライフ・タイマーとしてのアストロロジーを学ぶ機会を持てたなら、怖がることなく挑戦のときを過ぎ越していくこともきっと可能なんじゃないかな。 今が "本来の現実" への一歩なのだときちんと認識しながら。 そして二つの世界を同時に生きながら...。

これらはカイロン体験の特殊な事例かもしれません。でも、もしかしたらこれを読んでくれているひとの中に、似たような感覚で悩んでいるひともいるかもしれない。そう思って紹介してみました。

まぁどう転んでもカイロンは放れ馬。多くのケンタウルス族とも出自を異にする、孤独な探求者です。どんなに素晴らしいグルを見つけたとしても、おそらく依存は出来ません。依存は「永遠の死」を意味するからです。けれど、彼の訪れを受け入れてひとり歩む者には、急なコーナーを抜けるたびに多くの癒しを与えてくれるでしょう。 

  カイロンの癒やし。それは情の絡んだ慰めではなく、ひとをあっと言わせるようなマジカルな力でもなく、ただ自分が行くべきところに行き、為すべきことをしてこの旅を終えるための、その大切な鍵となる何かだと思います。 もしあなたが道を歩む戦士さんなら、これほど素晴らしい贈り物って...あるでしょうか?


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テーガーの研究はとても興味深く、小惑星との絡みなど多岐にわたりますが、残念ながらドイツ語が読めないわたしにはその多くがアンタッチャブルです。。 でも、もしまた面白い情報をみつけたら紹介しますね。

hiyoka_blue at 20:49│Comments(2)惑星達の話 

この記事へのコメント

1. Posted by Lone Wolf   March 17, 2018 20:54
5 hiyokaさん、こんばんは!
キロン(カイロン) の異説、俺には 腑に落ちました。


" 居る俺を 360度から視る もうひとりの俺 " " 手を伸ばせば、この空間の先にある、もう一つの空間に触れられる " " 前世で殺されたときの記憶 " " 脳裏にうつる他者の言葉と顔 " " 明晰夢と既視感 " " 根拠なき直感が指針の確信 "

ひとには話せない異質な俺であるものの、俺の当たり前の感覚。またひとつ、自分と自分の現実を受け容れることができた感覚です。

ありがとうございます!


キロンと月が4度の距離で隣接。月とエリスが1度の距離。それぞれ牡羊座6度、10度と11度。許容度 2度で観れるなら、月とエリスに天王星がオポジション。海王星とアスペクトがないのが不思議w

さて、、、もう春はそこまできてますね。俺は、この冬から春へ移りゆく日々が切なくて愛おしくて、いちばん、好きです!

では、hiyokaさんの日々に幸あらんことを願って、、、

Lone Wolf
2. Posted by hiyoka   March 18, 2018 04:52

Lone Wolfさん、こんばんは。

『カイロン異説』を腑に落ちたと言ってもらえて良かったです! もともと放れ馬の要素を色濃く持って生まれたひと達にも、それぞれに異なる人生の筋道と内的体験があり、ひとつに括ることは出来ないと思います。 けれどノーマルな"社会"のことばに翻訳出来ず、ノーマルな"精神世界"や"哲学"的文脈にもフィットしないような異質感は、強いカイロンを持つひとの底流を貫く共通感覚として存在するのかもしれません。カイロンはそれぞれのひとが独自の道を切り拓いていく上でどうしても必要になる「闇」と「虚」の担い手のひとつじゃないかと思います。

牡羊座で月・エリス・カイロンが合。それに天王星がオポジションですか。とても強力で興味深い度数ですね。張りつめた月とエリスに、カイロンが意識のサバイバル術を与えてるような...と同時に天王星が常にインパクトを与えているような。けれど海王星へのアスペクトが無いなら、それは(生まれどきを意識が選択してると仮定すれば)避けて正解だったかも!(^_^

冬から春への移行期は、優しいような物狂おしいような.. 生きもののいのちが香り立つような。
愛おしい...本当にそうかもしれませんね。。

Lone Wolfさんの道にも
沢山の花が咲きますように。。

have a great trek!!


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